OB起業家からのメッセージ

OB起業家からのメッセージ

神戸大学OBアントレプレナーからのメッセージ
フューチャーアーキテクト株式会社 代表取締役会長 金丸 恭文 氏

金丸恭文氏プロフィール

1978年神戸大学工学部計測工学科卒業。
(株)TKC、(株)ロジック、(株)NTT PCコミュニケーションズ取締役などを経て、1989年、フューチャーシステムコンサルティング(株)(現フューチャーアーキテクト(株))を設立して社長に就任。
2015年7月より同社会長。内閣府規制改革会議委員、公益社団法人経済同友会副代表幹事など数多くの公職に就いている。


フューチャーアーキテクトとは

本社は東京都品川区。資本金14億21百万円、売上高約344億円(2014年12月期)。1999年株式店頭公開、2002年東京証券取引所一部上場。ITを武器とした課題解決型のコンサルティングサービスを提供。顧客企業の経営上の課題を共有し、先進ITを駆使した情報システムによって顧客の課題を解決するITコンサルティングを行っている。グループ企業は、「パッケージ&サービス事業」「ニューメディア&ウェブサービス事業」「企業活性化事業」などを展開中。


金丸氏へのインタビュー

神戸大学科学技術イノベーション研究科教授の尾崎弘之金丸氏に、アントレプレナーとしてのご自身の理念、学生が目指すべきキャリアの方向性などについて聞いた。


変革の立役者である「アーキテクト」

尾崎: 御社の社名である『アーキテクト』はどういう考えで付けられたのですか?

金丸: 「アーキテクト(ARCHITECT)」の語源は「原理を熟知した匠」という意味のギリシャ語です。最近では「IT業界成長の立役者」や「外交政策の立案者」のように、歴史的な変革を作る存在を「アーキテクト」と呼びます。

尾崎: 金丸さんは最近、企業や地域を巻き込んだ変革を唱えられていますが、まさに「アーキテクト」が担う役割ですね。

金丸: 我々は創業以来、お客様である経営者のパートナーとなることを目指し、持続可能な成長のお手伝いをして来ました。これまでのコンサルティングの実績とお客様から頂いた信頼を基に、社会に変化を及ぼす立役者になりたいと考えています。


今の若者は起業機会に恵まれている

尾崎: 金丸さんが卒業された頃は転職の機会は殆どなく終身雇用が当たり前でした。神大の工学部であれば、大企業の技術者を目指す人が大半だったはずです。しかし、そういう道を選びませんでした。

金丸: 卒業後、財務会計などの情報システムを手がけるTKCに入りました。大企業に入って一生サラリーマンをやるのが嫌だったので、伸び盛りの若い会社を選んだのです。

尾崎: 当時は「ベンチャー」という言葉すらなかったし、ベンチャーキャピタルも存在しないに等しく、若者が起業するのは極めて難しい環境でした。今金丸さんが大学生だったら、在学中から起業されたでしょうね。

金丸: そうかもしれません。この15年ほどで、社会が起業をサポートする仕組みや環境が劇的に改善されました。今の若者にとって、自分でビジネスを立ち上げてチャレンジする機会が満ち溢れています。私から見れば、実に羨ましい状況です。


サラリーマン時代、起業に役立ったこと

尾崎: 金丸さんが、サラリーマンとして社会人生活をスタートして起業されるまで10年以上かかっています。その間、起業に役立つ学びはどのようなものがありましたか?

金丸: まず、現場の経験を積めたことが大きかったです。私は新人研修の成績も良かったし、当然、本社か研究所配属と思っていたのですが、蓋を開けたら熊本の営業所勤務を言い渡されました。

尾崎: 落ち込んだでしょうね?

金丸: 絶句しました(笑)。赴任先の先輩に慰められて、益々落ち込みました。しかし、切り換えて現場の仕事に没頭し、夜は会計の学校に通って勉強しました。現場が私を鍛えてくれ、それが当社の経営の基本になっています。

尾崎: 金丸さんが今でもこだわる現場主義はここから来たのですね。1年後は研究所へ異動して小型パソコンの開発プロジェクトに配属されています。

金丸: ここでも希望と違う現場に回されたことがプラスに作用しました。当時は、大型汎用機(メインフレーム)が主流の時代で、1年遅れの私は同期がやりたがらない小型パソコンチームに配属されたからです。数年後に「ダウンサイジング」が始まり、私がいたプロジェクトは急成長しました。メインフレームにこだわっていた人がパソコンの時代に乗り遅れたのはご存知のとおりです。

尾崎: 変化が激しい時代では、「自分はついていない」と感じた経験がむしろプラスに作用することがあるという例ですね。成功した人のキャリアを見ると必ずそういったことが見受けられます。


起業の本格的な準備

尾崎: 金丸さんがサラリーマンから起業家に踏み出した準備、キッカケについて教えて下さい。

金丸: パソコン開発の過程で、これからはオープンシステムの時代が来ると確信しました。そこで、「16ビットパソコンの開発をしたい」と転職活動のために大企業を回りました。ところが、どこも門前払いでした。唯一、興味を示してくれたのがロジック・システムズ・インターナショナル(現・ロジック)でした。私が28歳の時です。

尾崎: 大組織というのは画期的なイノベーションを成すことができません。クリステンセン・ハーバード大教授が指摘する「イノベーションのジレンマ」がここでも起きています。

金丸: ロジック内で我々のチームは画期的な仕事を成し遂げました。それはセブン-イレブン・ジャパンのシステム開発です。当時から先進ITユーザーとして有名だった会社だけに、システムへの要求は本当に厳しかった。「あり得ない納期」の仕事を前に落ち込みチームメンバーをなんとかしようと、「開発に成功した」という「架空の新聞記事」を勝手に作って、彼等を鼓舞していました。

尾崎: 経営は理屈だけでなく感情に訴えなければなりませんね。

金丸: 「自分たちが重要な仕事をしている」とメンバーの意識を高めることが大事です。プロジェクトが成功すると、「架空の新聞記事」と同じような記事が本当に掲載されました。今では、私達が作ったシステムがコンビニ業界の標準になっています。

尾崎: ここから本格的に起業準備が進んだのですか?

金丸: まず、ビッグ・プロジェクトに成功した実績を得て、我々のグループは業界で有名になりました。また、この時、良い人材と出会うことができました。プロジェクトに新入社員として参加した石橋国人君はフューチャーの創業メンバーとなり、現在は副社長を務めています。当時セブン・イレブン側の担当者だった碓井誠氏は同社の常務取締役を経て、後に当社の副社長に就任しました。


起業前にアイディアと理念をじっくりと練る

尾崎: 起業のアイディアはどのように構築されましたか?

金丸: 数年かけてじっくりと多くの可能性を検討しました。そこで、ITコンサルティングが最も高い付加価値を生むという結論に至りました。

尾崎: 起業の理念はどういうものでしたか?

金丸: 既に述べたように、お客様の真のパートナーになるとともに、人材への投資を惜しまないことです。IT業界はゼネコン業界と同様、顧客からプロジェクトを受注した企業が順次下請けの会社に仕事を回す階層構造になっています。この環境では、顧客ニーズを汲み上げて高度な仕事を行う人材は育ちません。我々は階層構造と無縁で、顧客と正面から向かい合える人材を育てており、ひいてはそれがお客様の利益につながります。


学生は技術とビジネスの両方を学ぶべき

尾崎: 金丸さんは理系の学生が奨学金を受けられる公益事業を運営されているそうですね。

金丸: はい。私は奨学金を受ける学生に対してひとつの条件を出しています。それは、在学中に簿記二級の資格を取ることです。研究、開発、企画、営業などどのような仕事に就くにせよ、理系の学問以外に経営の実践的な知識を身につけた人材でないと、これからのビジネス界では通用しません。

尾崎: ということは、我々の「理系人材にビジネスを教える」というコンセプトにはご賛同いただけますね?

金丸: 素晴らしいことですので、大いに進めて下さい。文系、理系といった縦割りに惑わされず、学生に複数の学問分野を経験させることが重要だと思います。頑張ってください。

尾崎: 頑張ります。最後に学生へのメッセージをお願いします。

金丸: アントレプレナーになりたい人は、迷わず起業して挑戦してください。経験することが皆さんを鍛えてくれます。将来目標として起業に興味がある人は、出来上がった大企業に就職するのではなく、成長の伸びシロが大きい企業に属することです。10年後、花形になっている企業は今無名の存在かもしれません。そういう「選択する目」を持つことが皆さんの成長につながります。


インタビュー者プロフィール:
尾崎弘之 神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科教授
1984年東京大学法学部卒業、1990年米国ニューヨーク大学MBA、2005年早稲田大学大学
院博士後期課程終了 博士(学術)
野村證券、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、ベンチャー企業経営者
などを経て、2005年より東京工科大学教授。2015年より現職。
専門はベンチャー経営、エネルギー環境ビジネス

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